生活に困ったときは誰でも受けることができる生活保護

憲法には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と書かれています。生活保護はこの憲法に基づく制度ですから、受けることは恥ずかしいことではありません。働いていても、年金をもらっていても、生活に困っている人は等しく受けることができるのです。

外国人の場合は?

外国人の場合は、保護に準ずる扱いをすることになっていますので、生活保護を受けることができます。対象となるのは、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特別永住者、認定難民です。

生活保護を受けることのできる条件

1.認められる資産しかもっていないこと 資産の要件

生活保護法はその利用できる資産を活用しても最低限度の生活を維持できないときに受けることができる制度です。
それは家もお金も全くない、「一文無し」にならないと受けられないという意味ではありません。

持ち家があっても保護は受けることが可能です
実際に生活している土地・家屋については原則保有が認められています。冷蔵庫やクーラー、パソコンも多くの場合保有が認められています。

現金・預貯金は最低生活費の半月分まで
保護開始時に最低生活費の5割以下の手持ち金は保有することが認められています。生活保護の申請前に使った金額まで問われることはありません。

車の保有は例外的に認められます
車の保有は原則認められていません。しかし、障害者が通勤する場合や、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合には例外的に認められています。

2.世帯の収入が最低生活費以下しかないこと 収入の要件

生活保護は世帯単位で受ける制度です。「3人で暮らしているが私だけ生活保護を受けたい」ということはできません(世帯単位の原則)。また住民票だけ「世帯分離」しても、実際に「ひとつ屋根の下」で暮らしていれば「同一世帯」になってしまいます。
世帯の収入を全て合わせて、その額が最低生活費以下の場合に、その差額が保護費として支給されるのです。
最低生活費は、地域によっても家族構成によっても違ってきます。

例えば、東京都区部にお住まいで、70歳の独り暮らしの方なら、生活扶助と住宅扶助を合わせて約13万円程度です。

こちらのサイトで生活保護の金額を算出できます。
生活保護の自動計算サイト

3.働く能力があっても失業中であれば支給されます

生活保護は、働く能力があればそれを活用して収入を得て、それでも足らない部分を支給する制度です。
しかしながら、働く能力があっても「働く意思」と「働く場所」がなければ生活を維持することはできません。当然、失業中の場合は生活保護を受けることが可能です。

4.扶養義務は強制ではありません

親子、兄弟姉妹の間には「扶養義務」があるといわれていますが、これは保護を受ける「条件」ではありません。実際に援助が行われたときに、その金額を収入とみなすということです。
親や子、兄弟姉妹の収入や資産がいくら沢山あったとしても、実際に援助が行われていなければ、保護を受ける上での障害にはならないのです。

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生活保護 ここが知りたいQ&A

私でも生活保護は受けることができますか?

 生活保護はどんなときに受けることができるのですか?

生活保護は、憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」に基づいて、「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障する」ことを目的にしています。
ですから、最低生活費以下の生活を余儀なくされている人は誰でも生活保護を受けることができるのです。これを「無差別平等」の原則といい、法律に定められています。(「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。」生活保護法第二条)
ただし、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」(生活保護法第四条)とも書かれており、最低生活費の半月分以上の預貯金や解約すると戻り金が入る生命保険等に入っている場合は、それを使って生活した上でないと、生活保護を受けることはできません。また、年金や児童扶養手当、雇用保険や労災、傷病手当など他の制度を活用できる場合は、それらの制度をまず利用し、それでも最低生活費を下回る場合に受けることができます。生活保護が「最後のセーフティーネット」と言われるのは、そのためです。

 若くて働ける場合でも生活保護を受けることができるのですか?

大丈夫です。働く能力があっても、実際に働いて収入がなければ生活することはできません。仕事が見つかり、自立するまでの間、生活保護を受けることは可能です。

「職や住まいを失った方々への支援の徹底について」という厚労省の通達(平成21年3月18日付け)には「働能力の活用の判断に当たっては、保護の実施要領の規定に従い、1  稼働能力があるか否か、2その稼働能力を前提として、その能力を活用する意思があるか否か、3実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か、により判断することとなる。」と書かれています。つまり若くて働く能力があっても実際に就労して収入を得ることができていなければ生活保護を受けることはできるのです。

 親と同居中ですが、私だけが生活保護は受けることができますか?

生活保護は世帯単位の原則があるので、同居のままでは難しいです。しかし家を出て一人になれば単身世帯として生活保護の受給は可能です。「別居するにもお金がない」という方もご相談下さい。

 友人宅に居候していますが、生活保護を受けることはできますか?

生活保護は世帯単位の原則というものがあり、世帯を単位として生活保護が受けられるかどうかを判断します。具体的には世帯全員の収入を合算して、最低生活費を上回っているのか下回っているのかを判断するのです。

そうすると、友人と「同一世帯」とみなされると働いている友人に収入があると受けられないということになってしまいます。

「同一世帯」か、どうかは、生計が同じかどうかで判断されます。

「居候」のようにたとえ同居していても一時的な場合は「生計が同一」とはみなさないのが当然です。

平成21年12月25日付の厚労省・保護課長通知「失業等により生活に困窮する方々への支援への留意事項について」では、「失業等により住居を失い。一時的に知人宅に身を寄せている方から保護の申請がなされた場合には、一時的に同居していることをもって、知人と申請者を同一世帯として機械的に認定することは適当ではないので、申請者の生活状況等を聴取した上、適切な世帯認定を行うこと。」と明記されています。

しかし実際上は、ほとんど全ての福祉事務所は「同一世帯として機械的に認定」して、居候状態の生活困窮者からの単独世帯としての生活保護支給を拒否しています。

その為、わざわざネットカフェなどに居所を一時的に移して生活保護申請を行わざるを得ない状況であり、ネットカフェに泊まるお金もない場合はホームレスになるしかなく、行政自らがホームレスを意図的につくり出しているのです。

上記課長通達では、こうした住居を失った者に対しては「可能な限り速やかに敷金等を支給し、安定的な住居の確保がなされるよう、支援すること。」とも書かれています。

つまり家を無くして友人宅等に居候状態になれば、まず友人宅を所在地として、本人単独での生活保護申請を実施し、敷金等も支給して安定した住居に住めるようにするのが、法と実施要領、通達に即した正しいあり方なのです。

全国の福祉事務所の側が法令、通達違反を繰り返しているのです。

こういうことをやめさせ、生活保護が受給できるように闘っていきます。ぜひお気軽にご相談下さい。

 貯金がゼロにならないと受けられないのですか?

そんなことはありません。福祉事務所に行くと、「貯金がなくなってから来てください」と言われたという相談をよく受けますが、事実ではありません。

福祉事務所に生活保護の申請を行う時点で、最低生活費の月額の5割以下の額、つまり半月分については、「収入」として認定しないという取扱いになっています。申請の時点でこれを超える預貯金が生活保護費から減額されます。

つまり、申請時点で預貯金・手持ち金があっても、生活保護の申請はすることができ、他に収入(給与や年金)が無ければ、最低生活費の1ヶ月半分未満なら保護の要件を満たすということになるのです。但し、最低生活費の5割(半月分)以上の分は、生活扶助額から減額されてしまいます。

(参考)『生活保護手帳2015年版』369㌻)

・・・保護開始時の程度の決定に当たって認定すべき手持ち金は。当該世帯の最低生活費(医療扶助及び介護扶助を除く)の5割を越える額とする。

 住民票が無くても生活保護は受けることができるのですか?

できます。

生活保護の実施要領では、「保護の実施責任は、要保護者の居住地又は現在地により定められるが、この場合、居住地とは、要保護者の居住事実がある場所をいうものであること。」と定められています。

「実施責任」とは、どこの福祉事務所がその人の生活保護を担当するか、つまりどこの役所に申請するかということです。

それは、住民票のある地域の役所でなくても実際に住んでいるところの役所ということになります。

但し、外国人の場合は、在留カードに記載された住居地を管轄する福祉事務所に生活保護の申請を行うこととされています(「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」より)ので注意が必要です。

ですから、公園に野宿している場合でも、ネット喫茶に寝泊まりしている場合でも、そこが「居住地」となり、その施設のある役所(福祉事務所)に申請することができるのです。

役所に相談に行くと、「家がないと申請できません」「住民票のあるところで申請して下さい」等と言われる場合がありますが、全くの間違いです。

無一文で野宿を余儀なくされているのに、家を借りることができないのは当然ではないですか。

岡行政書士事務所では、家が無く、野宿やネット喫茶暮らしを余儀なくされている人には、最初は無料で入居できるマンション・アパートを紹介し、そこまでの交通費も立て替え、生活保護の申請も代行しています。是非ご相談下さい。

 ホームレスでも生活保護を受けることができますか?

当然、受けることができます。ホームレスという状態そのものが「最低限度の文化的な生活」とはかけ離れているからです。よく、「住所がないから」「まだ若いから」という理由で生活保護申請もさせない福祉事務所がありますが、全く間違っています。

社援保発第0731001号(平成15年7月31日)の「ホームレスに対する生活保護の適用について」という通達には、「生活保護は、資産、能力等を活用しても、最低限度の生活を維持できない者、すなわち、真に生活に困窮する者に対して最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とした制度であり、ホームレスに対する生活保護の適用に当たっては、居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものでないことに留意し、生活保護を適正に実施する。」と、ハッキリ書かれています。

『生活保護手帳 別冊問答集』問2-16にも、「テントや段ボールハウス当で起居している者に対し、住所がないことを理由に申請を拒むことはできない」と書かれています。

当事務所では、「公園で野宿している」「車の中で生活している」「ネットカフェを転々としている」という方の生活保護申請を数多く手がけてきました。ぜひご相談下さい。

 特別養護老人ホームに入所する母だけで生活保護を受けることはできるのですか??

それは可能です。

昨日は、「現在、父と母と兄が同居しており、母は要介護状態で今後自宅での介護が難しくなるため、特別養護老人ホームへの入所を検討しています。入所ができた場合に、その後の入居費用等を支出することが難しく、生活保護を申請できないのですか」という問合せがありました。

生活保護は「世帯単位の原則」があるため、同一世帯に属している場合は、保護の要否は世帯単位で決まります。つまり世帯全員の収入を合算して最低生活費を下回る場合にその差額が保護費として支給されるのです。

国の考え方は、「同一の住居に居住し、生計を一にしている者は、原則、同一世帯員として認定すること。 なお、居住を一にしていない場合であっても、同一世として認定することが適当であるときは、同様とする こと。」とされています。

父・兄と母は今後同一の住居に住まないので、お母さんだけ別世帯として生活保護の申請ができそうなものですが、「居住を一にしていない場合であっても、同一世として認定することが適当であるとき」は同一世帯とみなされるので、これに該当するかどうかを検討する必要があります。

国は、「「居住を一にしていない場合であっても、同一世として認定することが適当である」場合として、「 病気治療のため病院等に入院又は入所している場合」をあげています。

これでは特別養護老人ホームへの入所もこれに当てはまり、父・兄と母が同一世帯となって母だけの生活保護申請ができないことになってしまいますが、ちゃんと「介護老人 保健施設への入所に限る」と但し書きが付いています。

介護老人 保健施設とは、「家庭への復帰を目指す」施設で、「終の棲家」である特養老人ホームとは違います。

よって、お母さんは単独で生活保護を受給し、入居費用等が保護費として支給されることが可能となるのです。

 コロナや物価高の影響で売上激減 自営でも生活保護は受けられますか?

当然受けることは可能です。

生活保護は憲法25条に基づいて無差別平等に最低限度の文化的な生活を保障することが目的です。自営業やフリーランスでも要件に合えば受けることが可能です。

先ず、収入要件は、「売上−経費」が最低生活費を下回っていることです。

経費には家賃や仕入代金等が含まれます。

資産の要件では、現金・預金は半月分の最低生活費までなら保有できます。

事業用の資産(不動産、機械工具等)も当然保有できます。

業績が元に戻るまでの間、生活保護を受けるのも一つの方法です。

 働いていると受けることはできないのですか?

そんなことはありません。働いていても、世帯の収入が最低生活費を下回っている場合は、その差額が生活保護費として支給されます。

この場合の収入の認定は、過去3ヶ月の給与の平均で判断されます。

また、給与全額が最低生活費から差し引かれるのではなく、給与から一定の控除額を差し引いた額を、最低生活費から差し引くので、(生活保護費+給与総額)は、最低生活費より多くなるのです。

これは働いても働かなくても使える生活費が同じなら、勤労意欲を疎外するので、就労による自立を促進する立場で取られている措置です。

例えば、その世帯の最低生活費が15万の場合、働いて10万円の収入があった場合、保護費は、15万円-10万円=5万円となるのではなくて、15万円-(10万円-勤労控除額)となるのです。

 借金があると生活保護は受けられないのですか?

そんなことはありません。よく、(福祉事務所に行くと)「借金があると生活保護は受けられませんと断られた」という苦情が寄せられますが、この説明は全くのウソです。

当該世帯の収入が最低生活費を下回り、保護に優先して活用すべき資産も無く、援助を要請できる扶養義務者もなく、年金など、他法の活用による自立も困難な場合は、当然保護開始の要件に合致します。

ただし、「借金の返済で生活が苦しい」というのは、保護開始の要件にはなりません。借金の返済に充てた残りの生活費ではなく、あくまで、収入の総額が最低生活費を下回っていないと、生活保護を受けることはできません。

当事務所では、借金の額が一定以上の場合は、各地の「法テラス」を紹介し、自己破産等の債務整理を行うことを勧めています。生活保護受給中なら、法律扶助の対象となり、債務整理のための弁護士費用等が立替払いされます。

また少額の場合や債務整理を望まない場合は、債権者に対し、「作成代理人 行政書士 岡晃敏」の記名・捺印のある「通告書」を作成・送付し、生活保護受給中の返済の猶予棄を求めています。ぜひご相談ください。

 資産を全部処分しないと受けられないのですか?

そんなことはありません。

生活保護法には「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。(第四条 )」と書かれています。

しかし、全ての資産を売り払ってからでないと保護を受けられないかというと、そんなことはありません。

資産活用とは、売却して生活費に充当することですが、そんなことをしなくても構わない例外として、国は次の場合を挙げています。(『生活保護手帳2015年度版』207㌻)

1.その資産が現実に最低限度の生活維持のために活用されており、かつ、処分するよりも保有している方かが生活維持及び自立の助長に実効があがっているもの。

2.現在活用されてはいないが,近い将来において活用されることがほぼ確実であって、かつ、処分するよりも保有している方が生活緬寺に実効があがると認められるもの。

3.処分することができないか、又は著しく困難なもの。

4.売却代金よりも売却に要する経費が高いもの。

5.社会通念上処分させることを適当としないもの

また、この原則(次官通知第3)に基づいて、局長通知第3は、資産活用の具体的取扱いについて規定しています。

資産のなかでも現実に生活している家屋・土地や生業に活用されている不動産などは原則として使用が認められ、家具什器及び衣類寝具は利用の必要があるものは保有が認められ、貴金属、債権は保有が認められませんが、趣味装飾品その他については処分価値の小さいものは保有が認められています。

 持ち家があると受けられないのですか?

そんなことは全くありません。

厚生労働省の「局長通知第3号」には、以下のように書かれています。(『生活保護手帳2015年度版』207㌻)

次に掲げるものは保有を認めること。・・・

(ア)当該世帯の居住の用に供される家屋に付随した土地

2.家屋

①当該世帯の居住の用に供される家屋

保有を認めること。

但し、世間一般と比較して豪華な家は、例外となりますが、そもそも生活保護の申請を希望する人に、そんな「豪邸」に住んでいる人にはお目にかかったことは一度もありません。ようするに持ち家を処分しないと生活保護を受けることができないというのは、迷信でしかないのです。

 住宅ローンが残っているが、生活保護の受給は可能ですか?

受けることのできる場合もあります。

ローン付き住宅について、厚生労働省の見解は「結果として生活に充てるべき保護費からローンの返済を行うこととなるので、原則として保護の適用は行うべきでない」ということです。(『生活保護手帳2015年度版』220㌻)

しかし全てダメということではなく、『生活保護手帳別冊問答集2015年度版』問3?9には「ローン支払いの繰り延べが行われている場合、又は、ローンの返済期間も短期間であり、かつローン支払額も少額である場合には、ローン付き住宅の保有を認め保護を適用して差し支えない」と述べられています。

つまり、①ローン支払いの繰り延べが行われている、②返済期間が短期間でローン支払額も少額という、二つの場合には、ローン付き住宅に住んで、保護を受けることができるということです。

 「持ち家のある高齢者は受けられない」と聞きましたが?

「不動産担保型生活資金制度」のことです。これは、「要保護の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金」のことで、保護に優先してこの貸付金で生活し、貸付の利用が終了してからでないと、生活保護が受けられない仕組みになっています。

この制度の利用が求められるのは、65歳以上の持ち家所有者で、資産価値が500万円以上(固定資産税評価額の7割)で、先順位に担保権等が設定されていない居住用不動産を保有している場合です。土地及び建物の評価額の70%程度を限度に、毎月最高生活扶助額の1.5倍以内の融資が行われます。

しかしこの制度を利用する為には、持ち家所有者の推定相続人(配偶者や子)全員の承諾が必要になっています。逆に言えば、相続人のうち一人でも反対すると、この融資制度を使うことはできず、生活保護が受けられることになります。福祉事務所によれば、同意しない相続人にはそれに見合った援助を求めるというところもありますが、あくまで援助は自分の意思なので、同意しないからといって、援助を強制される筋合いはありません。

この制度は、生活保護を抑制することが目的で、大きな問題をはらんでいる制度です。この融資制度の利用を求められたら、相続人(親族)で「何が一番得策か」、よく話し合いましょう。

 「親や兄弟がいると受けられない」と聞きましたが、本当ですか?

そんなことは決してありません。

福祉事務所は、生活保護法第四条の「2  民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」という条文を持ち出して、「先ず親や兄弟に援助を頼んでから生活保護の請求を」等と言います。そんなことは決してありません。

しかしその言い方は間違っています。「保護に優先して行われる」という意味は、扶養義務者が月々の金銭援助を申し出ている場合等、扶養する意思と能力を持っている場合に、保護に優先して、被保護者がその援助を申し出なさいということです。そんなことは決してありません。

親や兄弟がいても、①扶養する意思と②能力(扶養できる経済力)の両方が備わっていない場合には、単なる「期待可能性」に過ぎないので、収入も最低生活費以下で、保護に優先して活用できる資産(預貯金等)がない場合には受けることができるのです。

 別居中ですが、離婚届を出さないと受けられないのですか?

そんなことはありません。

生活保護の実施要領では、夫婦であっても別居している期間が相当長期にわたっている場合など、夫婦関係の解体が明らかな場合には別世帯とみなしてもいいことになっています。(『生活保護手帳別冊問答集2015年版』28㌻)

この場合でも法律上は夫婦であるので、夫には「生活保持義務」があり、妻を遺棄することは許されませんが、別居中の夫が妻の生活費を負担する例はほとんどありません。

妻と子が保護の要件に合致する場合は、離婚届を出していない場合でも、生活保護を受けることは十分に可能です。当事務所への依頼者の中にもこうした例はたくさんあり、離婚届の有無によって保護申請が却下されたことは一度もありません。ぜひご相談下さい。

 外国人も生活保護が受けられるのですか?

受けることができます。

現在、生活保護法上、外国人の生活保護受給権は認められていません。しかし、国の通知によって、保護に準ずる扱いをすることになっています。  

対象となるのは、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特別永住者、認定難民です。  

公園、ネットカフェで寝泊まりする人の場合、寝泊まりしている地域の福祉事務所が実施責任を負いますが、外国人の場合は、在留カード等に記載された住所を管轄する福祉事務所になります。  

問題は、「受給権がない」、つまり、「恩恵」という位置づけのため、仮に保護申請が却下されても、不服申立て等の審査請求ができないことです。私が申請代理を行った経験では、やはり救済措置が無いということは、福祉事務所の「指導」等には異議があっても従わざるを得ず、外国人の人権擁護の観点からは大きな問題です。欧米では、自国民と外国人の適法滞在者を差別しないことが常識であり、日本はこの面でも大変遅れています。

 刑務所から出てきたばかりですが生活保護は受けられますか?

生活保護は、生活に困窮し他の要件を満たしている限り、刑務所を出所して仕事も見つけることができず、所持金もわずかという場合は当然生活保護を受けることができます。

一般的に、刑務所の出所者が、求職活動を行ってもすぐに仕事が決まることは余りありません。出所したときの手持ち金がわずかでは、住居の確保も難しく、簡易宿所等を転々として、ついにはホームレスになるという事例が沢山あります。

当事務所にもこうした方の相談が頻繁に寄せられますが、申請代行を行った全てのケースで保護が開始され、施設ではなく、全てアパート、マンションを借りての「居宅保護」になっています。ぜひお気軽にご相談ください。

 生活保護の申請は本人しかできないのですか?

生活保護法第7条には「保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。」と書かれています。

つまり、生活保護を受けたい人(要保護者)だけではなく、扶養義務者や扶養義務者ではない同居の親族も請求することができるのです。

この7条は国民に「保護請求権を与える」ことを目的にしているので、「要保護者の中には保護請求権を行使することのできない者が事実上少なくない」ことを念頭に置いての措置です。(『生活保護法の解釈と運用』162㌻)

生活保護法でいう「扶養義務者」とは、直系血族(親子)、兄弟姉妹の範囲を指します。親子兄弟姉妹の範囲の人は本人(要保護者)と同居していなくても生活保護の申請ができるのです。

この7条には「申請に基づいて開始」すると書かれているだけで、申請の要式(文書か口頭か)については何も書かれていないので、「非要式行為」であり、福祉事務所の窓口に行って、「私は生活保護を受けたい」と口頭で告げるだけでも法律的には申請は有効です。

申請を行うのに行為能力も要せず、子どもでも申請することができます。

保護請求権は一身専属権であるので、「代理に親しまない行為」であるといわれています。ここでいう「代理」とは民法上の「代理」であって、『生活保護法の解釈と運用』の中では「教育扶助を受けるために学校長が児童の代理人として申請すること」をその一例としてあげています。よって行政書士による「申請代理」は国民の「保護請求権」を補完するものであって、7条と矛盾するものでは決してありません。

 生活保護の申請にはどんな書類が必要ですか?

申請書を提出するだけで大丈夫、何も書類を揃える必要はありません。

生活保護法の24条には「保護の開始を申請する者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない。」と書かれ、申請書には次の事項を書かなければならないことになっています。

一 要保護者の氏名及び住所又は居所

二 申請者が要保護者と異なるときは、申請者の氏名及び住所又は居所並びに要保護者との関係

三 保護を受けようとする理由

四 要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む。以下同じ。)

五 その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

また、同条2項には、「前項の申請書には、要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な書類として厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。」と書かれています。

この24条は平成14年の法改正によるものです。それまでは口頭による申請も可能でしたし、保護の必要性を判断するための書類(資産や収入、扶養義務者の報告書)も申請後に提出すればよいことになっていたのに、申請時に添付するように変えたのです。

これは申請のハードルを上げて、生活保護を受けにくくするためためです。

しかしながら、大きな反対運動の結果、国会の答弁では「法改正があっても運用は変わらない」と政府側が答弁し、現在まで、肝心の添付書類を定める厚生労働省令も制定されていません。

よって、申請する場合は、申請書以外は提出する必要はないのです。

 一人で役所に行っても受けることはできますか?

当然、誰でも生活保護の申請を行うことができることは法律が保障しています。ところが実際には「事前相談」と称して中々申請さえさせてもらえないのが実際です。本来受けることのできる人を違法に閉め出すことは許せないことですが、「水際作戦」と称してまかり通っています。

法律と制度を詳しく知らない一般の人が、「プロ」である福祉事務所の職員から「貯金がゼロにならないと受けられない」「財産を売らないと受けられない」「親兄弟にまず扶養を頼んでから来てください」等々と言われると、「私は受けられないのか?」と諦めてしまう場合が多いのです。

こうした場合は、ぜひ当事務所のご相談ください。

 障がい者の生活保護はどこの自治体に申請するのですか?

生活保護を申請する自治体は、原則はその人の居住地又は現在地です。しかし障がい者がグループホームに入居する場合は特例があります。

この場合は、入居前に保護を受けていたかどうかにかかわらず、 入居前の居住地又は現在地を所管する保護の実施機関(自治体)が保護の実施責任を負うので、そこに申請します。ですから当然、すでに生活保護を受けていた場合は、その者人の入所又は入居期間中、従前の保護の実施機関が従前どおり保護の実施責任を負うことになるので、新たに保護の申請を行う必要はありません。

生活保護 ここが不安

車を持つことはできないのですか?

生活用の車は、日常生活の便利に使われる場合には認められていませんが、事業用の車は同じ地域の低所得世帯との均衡を失することにならないと認められる場合には保有を認めてもいいことになっています。

「課長通知第3?9」では、以下の4つの場合には通勤用自動車の保有を認めていいことになっています。(『生活保護手帳2015年度版』215㌻)

1.障害者が自動車により通勤する場合

2.公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合

3.公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車により迎勤する場合

4.深夜勤務等の業務に従事している者が自動車により通勤する場合

このうち、2〜4には更に以下の条件が付けられています。

1.世帯状況からみて、自動車による通勤がやむを得ないものであり、かつ、当該勤務が当該世帯の自立の助長に役立っていると認められること。

2.当該地域の自動車の普及率を勘案して、自動車を保有しない低所得世帯との均衡を失しないものであること。

3.自動車の処分価値が小さく、通勤に必要な範囲の自動車と認められるものであること。

4.当該勤務に伴う収入が自動車の維持独を大きく上回ること。

保育所の送迎のための通勤用自動車については、以下の場合に保有を認めてもいいことになっています。(『生活保護手帳別冊問答集2015年度版』123㌻)

1.当該自治体の状況等により公共交通機関の利用が可能な保育所等が全くないか、あっても転入所がきわめて困難であること。

2.転職するよりも現在の仕事を継続することが自立助長の観点から有効であると認められること。

又最近の通達(「新型コロナウイルス感染症拡大の影響下の失業等により就労を中断している場合の通勤用自動車の取扱いについて」)では、「自営収入等の減少により保護を開始した世帯」については、「新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響が収束した後に収入が増加すると考えられる場合」は、「処分指導を行わないものとして差しつかえない」と明記されています。

滞納している市民税があるのですが、どうすればいいですか?

税金を滞納すると、役所から督促状が来て、それでも払わないと「滞納処分」が行われます。

「滞納処分」とは、滞納となっている市税等を強制的に徴収することで、その人の財産(給与、預貯金、自動車、不動産等)を差し押さえることです。

しかし生活保護の受給者は、地方税法第15条の7第1項第2号の「滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。」に該当しますので、滞納処分の執行停止がなされるのが通常です。

税金を滞納しているからと言って、強制的に保護費から差し引かれることはありません。ご安心下さい。

生活保護が継続すれば、執行停止も継続し、執行停止が3年継続した場合には、税金の支払い義務も無くなります。

生活保護を受けている市町村と税金を請求する市町村が同じ場合は、生活保護の担当課から税金の係に連絡が行くので、督促状が送られて来ることはありません。しかし、それが違う場合には、生活保護を受けているという事情を税務の担当課が知らないので、督促してくるのです。

そういう場合には、連絡すれば督促をしてくることも無くなるのが通常です。

信頼できるケースワーカーであれば、事情を話して、連絡してもらうのも有効でしょう。

冷蔵庫やエアコン、電子レンジを購入する費用は支給されるのですか?

給されます。

生活保護では、こうした日常生活に必要なものは通常の生活保護費の中からやり繰りして買いなさいというのが原則となっています。

しかし元々必要最低限しか支給されない保護費を節約して、こうした高額なものを買うことは非常に困難です。

そこで国も「最低生活に必要な物品を欠いていると認められる場合であって、それらの物資を支給しなければならない緊急かつやむを得ない場合」であれば支給してもいいことになっています。

基準となる額は、家具什器は47,100円、暖房器具51,000円、冷房器具51,000円等となっています。

引っ越して来た場合や、病院を退院した場合に、こうした「最低生活に必要な物品」が無い場合は、遠慮無く申請しましょう。

生活保護を受けると親戚に連絡が行くのですか?

連絡されないようにすることは可能です。

いままで、「生活保護を申請していることが親戚に分かってしまう」と、申請をためらう事例が数多くありました。

これは「扶養照会」と言って、生活保護の申請をすると、福祉事務所が親・兄弟・子どもの範囲の人に、「援助はできませんか」等と手紙を送っていたので、申請していることが分かってしまうのです。

親・兄弟・子どもとはいえ、生活保護の申請を知られることは「絶対嫌だ」という人は沢山います。そのことが原因で受けるべき人が受給できないとなると本末転倒です。

子どもが小さいときに離婚し、元配偶者が引き取り、それ以来一度も会ったこともないないのに、父親(母親)が生活保護の申請をしていることを知られることを喜ぶ人は誰もいないでしょう。

国会での野党の追及も功を奏して、今回国の取扱いが変わり、以下の場合には「扶養照会」は行われないことになりました。

① 被保護者、社会福祉施設入所者、長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者(いわゆる専業主婦・主夫等)、未成年者、 概ね70歳以上の高齢者など。

② 要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない (例えば、当該扶養義務者に借金を重ねている、当該扶養義務者と相続 をめぐり対立している等の事情がある、縁が切られているなどの著しい関係不良の場合等が想定される。なお、当該扶養義務者と一定期間(例えば10年程度)音信不通であるなど交流が断絶していると判断される場合は、著しい関係不良とみなしてよい。)

③ 当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者(夫の暴力から逃れてきた母子、 虐待等の経緯がある者等)

又、この3つの類型に「直接当てはまらない場合においても、これらの例示と同等のものと判断できる場合は、「扶養義務履行が期待できない者」に該当するものとして取り扱ってよいことはいうまでもない」と述べていることも重要です。

生活保護を受けるのに、どれくらいの日数が必要ですか?

生活保護法には「保護の実施機関は、保護の開始の申請があつたときは、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもつて、これを通知しなければならない。」「通知は、申請のあつた日から十四日以内にしなければならない。ただし、扶養義務者の資産及び収入の状況の調査に日時を要する場合その他特別な理由がある場合には、これを三十日まで延ばすことができる。」(第二四条)と書かれています。

つまり保護が決まるまでの日数は、原則は「申請日から14日以内」です。しかし実際には30日近くかかる場合がほとんどです。

「申請日」とは、「行政手続法」という法律に「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず・・・(第七条)」と書かれているように、申請書が事務所(役所の本庁)に届いた日のことです。

生活保護の種類と支給額はいくらですか?

生活保護法には、次の8つの扶助が定められています。

①生活扶助

②教育扶助

③住宅扶助

④医療扶助

⑤介護扶助

⑥出産扶助

⑦生業扶助

⑧葬祭扶助

支給額は住んでいる地域、家族構成によって違ってきます。

こちらのサイトで生活保護の金額を算出できます。

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令和5年度の生活保護費を簡単な入力だけで自動計算します。全国1741市区町村に対応。まずはお住まいの都道府県・市区町村を選択、次にあなたの年齢、世帯構成などを入力し…

〇大阪市内に住む20歳台の独身者・・・119,230円

〇青森県南津軽郡に住む60歳台の夫婦・・・132,330円

〇岡山市に住む母子家庭(母30歳台、2歳と5歳の子)・・・189,870円

医療費はどうなるのですか?

医療費は、生活保護保護の中の医療扶助として支給されますので、無料です。安心して医療を受け、病気を治して下さい。

医療費として支出されるのは、診察、薬剤又は治療材料、医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術、居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護、病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護、移送の範囲で、健康保険や国民健康保険と全く同じです。

医療を受けることができるのは、都道府県知事が指定する医療機関です。指定を受けていない医療機関もあるので注意が必要です。

敷金や礼金も支給されるのですか?

次の場合に支給されます。

第一は、被保護者が転居に際し、敷金等を必要とする場合です。

第二は、保護開始時において、安定した住居のない要保護者が住宅の確保に際し、 敷金等を必要とする場合です。

敷金等の範囲は、敷金、権利金、礼金、不動産手数料、火災保険料、保証料 です。

限度額は実施機関によって違います。大阪市は16万円、神戸市は31万2千円です。

「転居に際し、敷金等を必要とする場合」とは、「実施要領」の問答集「第7の30 」で「実施機関の指導に基づき、現在支払われている又は間代よりも低額な住居に転居する場合 」、「宿所提供施設、無料低額宿泊所等を一時的な起居の場として利用している場合であって、居宅生活ができると認められる場合」、「現在の居住地が就労の場所から遠距離にあり、通勤が著しく困難であって、当該就労の場所の附 近に転居することが、世帯の収入の増加、当該就 労者の健康の維持等世帯の自立助長に特に効果的 に役立つと認められる場合 」、「住宅が確保できないため、親戚、知人宅等に一 時的に寄宿していた者が転居する場合 」、「離婚(事実婚の解消を含む。)により新たに住 居を必要とする場合 」、「家主からの借家契約の更新の拒絶若しくは解約の申入れを 行ったことにより、やむを得ず転居する場合 」など17の場合に支給して差し支えないとされています。

「保護開始時において、安定した住居のない要保護者」とは本来ネットカフェ等で寝泊まりしていた者が新たに住居に入居した場合に支給されるべきものです。

多くの自治体(実施機関)では支給されていますが、大阪市等では「新たな住居に入り、契約を結んだ段階で安定した住居がある」と言う理屈で頑なに敷金等の支給を拒否しています。

しかしこれは間違っています。

群馬県行政不服審査会の「令和元年度答申第 1 号 住宅扶助支給申請却下処分についての審査請求」に対しての審査会の判断では、敷金等の不支給は違法であり、取り消すべきとの結論が出ています。

理由は、たとえ入居時に契約を締結していても「面接時の記録及びその後の預貯金調査において…当該手持ち金で敷金等を支払うことができないことは明らかであったことが認められる。敷金等の支払いが完了しないかぎり債務不履行による契約解除は当然にあり得ることであるため、契約を締結することがすなわち「安定した住居」が あることになるとは解されず、審査請求人には「安定した住居」があったとはいえない状況 であったと解するのが妥当である。」「審査請求人は局⻑通知第7の4の(1)のキにいう「安定した住居のない要保護者」に該当する者であったと解されることから、これに反して審査請求人の支給申請を却下した本件却下処分は違法というべきであり、取り消されるべきである。 」と結論付けています。

引っ越し代は支給されるのですか?

「移送費」が支給される場合があります。

支給されるのは、例えば親族が危篤になった場合や葬儀に参加する場合、転居する場合の荷造費及び運搬費を要するときです。

野宿生活など、一定の住居を持たない者が扶養義務者その他の確実な引取り先に移送する必要があると認められる場合も支給の対象となります。

介護の費用も出るのですか?

介護の費用は介護扶助として支給されます。その範囲は、居宅介護、福祉用具、住宅改修、施設介護、介護予防、介護予防福祉用具、介護予防住宅改修、介護予防・日常生活支援、移送で、介護保険の全てのサービスが利用可能です。

介護扶助は都道府県知事等の指定した施設等でないと受けることはできません。サービスを受ける施設が指定を受けているかどうか、確かめる必要があります。

介護保険料も生活保護受給者は全額免除となります。

家賃は幾らまで出るのですか?

住宅扶助額上限額(家賃補助)は、住んでいる地域によって異なり、毎年改定されます。単身者であっても車椅子、高齢者、特別な事情がある方など基準額では到底家賃に及ばない場合は1.3倍額まで増額される場合があります。

詳しくはことらをご覧下さい。「生活保護の自動計算サイト」https://seikatsu-hogo.net/

年金は無くなってしまうのですか?

そんなことはありません。

生活保護法は、第四条で「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と規定しています。

「利用し得るもの」の中には当然年金の受給権も入っていますので、年金を受けている人はそれを受給し、最低生活費との差額が保護費として支給されるのです。ですからもらっている年金が「消えて無くなる」ことは決してありません。

国民年金に加入している場合、生活保護の生活扶助を受けると当然に保険料の支払いが免除されます(法定免除)。また、生活扶助以外の扶助(例えば医療扶助)を受けた場合には、申請すれば保険料の全額又は一部が免除されます。

保険料が免除されると免除された期間は、保険料の納付等要件の期間に計算され、年金額も保険料を払った場合の半額(全額免除の場合)が支給されますので、絶対お得です。

法定免除の場合でも、必ず届出は必要ですので、忘れずに行いましょう。

子どもは高校をやめなくてもいいのですか?

当然です。

高等学校や専門学校に就学し卒業することが世帯の自立助長に効果的と認められる場合には、進学しないで働くことは求めないで、高校等に進学することが認められ、高校生等の生活費も生活保護から支給される扱いになっています。「生活保護を受けると高校に行けない」は迷信でしかありません。

生活保護世帯は大学や専門学校には行けないのですか?

そんなことはありません。

大学や専門学校に行くことができます。

但し問題なのは、お子さんを、生活保護上は「世帯分離」の措置をとって、生活保護世帯から除くやり方で、行けるようにしているということです。

つまり、高校までは生活保護世帯の一員とみなして、生活扶助や医療扶助、教育扶助も支給するが、大学以上(短大や専門学校)の場合は、「本来働いて生活費を稼ぎ、早く生活保護から自立すべし」という考え方で、大学等に行くことは認めるが、同一世帯でも生活保護だけは「別世帯」として扱って、生活保護費は支給しないというやり方なのです。

生活保護の実施要領(局長通知第1の5(2))では、「世帯分離」によって進学を認める場合として、①保護開始時に現に大学に就学しており、大学を続けることが世帯の自立助長に効果的であると認められる場合、②貸与金当を受けて大学で就学する場合、③専修学校又は各種学校で就学する場合であって、その就学が特に世帯の自立助長に効果的であると認められる場合、の3つを明記しています。

但し、最低生活費の計算上、進学するお子さんの分が減額される為に、最低生活費が収入認定額を下回り、保護が打ち切りになる場合もあります。また、打ち切りにならなくても、保護支給額が大幅に減額され、それでなくても苦しい生活保護世帯の生活を圧迫します。進学するお子さんは医療扶助も使えません。

大学(短大や専門学校)進学率は6割を超えています。早急な制度の見直しが求められています。

ホームレスは施設に入れられるのですか?

そんなことはありません。

住所のない方が生活保護を受けても、施設保護を強制される例があります。大阪市などでは、「施設入所」を原則にしているため、ホームレスでありながら、施設入所を嫌って保護を受けない例もあります。

しかしこれは生活保護の原則から逸脱しています。

生活保護法第三十条には、「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする。ただし、これによることができないとき、これによっては保護の目的を達しがたいとき、又は被保護者が希望したときは、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、又は私人の家庭に養護を委託して行うことができる。2  前項ただし書の規定は、被保護者の意に反して、入所又は養護を強制することができるものと解釈してはならない。」と、明確に書かれています。つまり施設ではなく、プライバシーの確保された居宅に住んで生活保護を受けるというのが原則で、施設はあくまで例外なのです。

当事務所が代理人として申請したケースでは、全員が居宅保護を実現し、施設に入れられた人は、今まで一人もいません。また、施設保護を受けている方からの依頼で、施設を抜け出し、居宅に移られた方もいます。ぜひお気軽にご相談下さい。

「安い家賃の家に移らないと受けられない」と言われましたが本当ですか?

「福祉事務所に相談に行ったところ、家賃が高すぎるのでもっと安いところに転居しないと保護は受けることができない」と言われたという相談が多数寄せられます。

しかしこの福祉事務所の説明は全く間違っています。

生活保護法には、「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。(第二条)」と、「無差別平等」の原則が謳われており、「高い家賃の家に住んでいる者」を、生活保護の対象から除く規定はどこにもありません。

国の通達(実施要領)でも、国の住宅扶助額の範囲内で住宅扶助の認定(決定)を行い、「限度額を相当に上回る家賃のアパートに入居しており明らかに最低生活の維持に支障があると認められる場合には、法27条に基づく指導として転居を指導することも考えられる」と述べています。生活保護を受けても家賃は最高限度額までしか支給されず、それを超える部分は生活費を削って払う必要があるので、「最低生活の維持に支障があると認められる場合」もあるのです。

「限度額を相当に上回る家賃」と書かれているのですから、限度額をわずかに上回る程度では、転居の必要はありません。

27条に基づく指導とは、以下の通りです。

第二十七条  保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。

2  前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。

3  第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

つまり、家賃の安い借家に移る指導はできるが、決して強制はできないということです。また、指導に従って引っ越しをした場合は、敷金等の一時扶助が支給されることになっています。

保険は全て解約する必要があるのですか?

そんなことはありません。

国の通達(実施要領)では、「保険の解約返戻金は、資産として活用させるのが原則である。ただし返戻金が少額であり、かつ保険料額が当該地域の一般世帯との均衡を失しない場合に限り、保護適用後保険金又は解約返戻金を受領した時点で法第63条を適用することを条件に解約させないで保護を適用して差しつかえない。」という取り扱いになっています。

「返戻金が少額」かどうかの判断基準については、『生活保護手帳別冊問答集2015年度版』129㌻ 問3-24において、「解約返戻金が少額であるかの判断については、医療扶助を除く最低生活費の概ね3ヶ月程度以下を目安とされたい。・・・また、保険料額の当該地域の一般世帯との均衡の判断については、・・・医療扶助を除く最低生活費の1割程度以下を目安とされたい。」 と、厚生労働省の判断が示されています。

原付バイクは処分しなくてもいいのですか?

そうです。

実施要領では、125㏄以下のオートバイや原付自転車の場合は、生活用でも保有が認められています。認められるのは、以下の要件を全て満たした場合です。(『生活保護手帳 別冊問答集 2015年度版』 127㌻)

①現実に最低生活維持のために活用されており、処分するよりも保有する方が生活維持及び自立助長に実効があがっていると認められること。

②一般世帯との均衡を逸しないこと。

③自賠責保険、任意保険に加入していること。

④維持費が捻出可能であること。

実際には、要件の判断を厳しくして、認めない福祉事務所も多くあるのです。ある市では、ケースワーカーが保護開始申請をしたら、「今後一切バイクに乗らないように」と「強制」するケースもありました。そもそもケースワーカーが保護を開始もしていない「申請者」にこのような「指導」を行う権限はなく、抗議して撤回させましたが、このような「違法行為」が生保の現場ではまかり通っているのでしょう。

ペットを飼うことはできるのですか?

基本的に保護費の使い道は保護受給者に任されているので、生活保護費の範囲で、ペットの餌を買うことは自由です。

生活保護受給中の福祉事務所の「指導」につては、生活保護法に規定されています。

第二十七条  保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。

2  前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。

3  第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

つまり私生活の自由を犯してはならないというのが、生活保護の原則なのです。

何より、「処分」を行政が強要すれば、「動物の愛護及び管理に関する法律」に行政自らが違反することになります。

生活保護受給中のご相談

生活保護を受けていてもフードバンクから食品をもらってもいいのですか?

大丈夫です。

『生活保護手帳 別冊問答集 問8-29』には、「子ども食堂において無償で提供される食事や、フードバンクから提供される食料については、その取組の趣旨に鑑み、原則、収入として認定しないことして差し支えない」と明記されています。

よって、食料バンクから食料の提供を受けることもできるし、その分を保護費から差し引かれることもありません。

家賃や共益費を役所から家主に直接振り込んでもらうことは可能ですか?

可能です。

以前は滞納が続くなどの事情があり、かつ保護受給者の同意がないと、家賃や共益費を役所から家主に直接振り込んでもらうこと(代理納付)は出来ませんでした。

しかしながら、令和2年3月31日付の国の通知で方針が変わりました。(「生活保護法第37条の2に規定する保護の方法の特例(住宅扶助の代理納付)に係る留意事項について」の一部改正について)

この通知では、住宅扶助費について、「(家賃の滞納問題は)本来、家主と入居者である被保護者との間で解決されるべき問題ではあるが、住宅扶助として使途を限定された扶助費を一般生活費に充当することは生活保護法の趣旨に反するものであり、住宅扶助費が家賃支払いに的確に充てられる必要がある。また、原則として共益費は住宅扶助費と同時に家主等に支払う必要があるものである。」との認識を示しました。

その上で、生活保護法第37条の2及び生活保護法施行令第3条の規定により、被保護者に代わり保護の実施機関が納付することを可能としたのです。

原則的に代理納付の適用となるのは、①家賃等を滞納している場合②公営住宅の場合③登録住宅の場合④無料低額宿泊所の場合です。

それ以外の場合でも「実施機関において適宜代理納付の対象者を決めることは差し支えない。」となっており、多くの実施機関(各自治体の福祉事務所)で実施されています。

又、「代理納付の実施にあたって、被保護者の同意及び委任状等は要しない」ことも明記されました。

③の「登録住宅」とは、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律

に規定する住宅確保要配慮者の入居を拒まない住居」のことで、都道府県知事・政令市長への届出が必要です。希望する方はご相談下さい。

就職するときにはどんな給付があるのですか?

新しい就職先に赴く為の交通費又は荷物の荷造費及び運賃について、生活扶助の移送費が支給されます。

又、就職支度費として、就職のため直接必要とする洋服類、履物等の購入費用や初任給が支給されるまでの通勤費も支給されることになっています。

よく就職が決まるとすぐに生活保護は廃止されるのかという質問を受けますが、そんなことはありません。保護が廃止されるのは実際に給与が入り、「当該世帯における定期収入の恒常的な増加等により、保護を再開する必要がないと認められるとき。」です。

生活保護費へ過払金がある場合は、必ず返還する必要があるのですか?

生活保護費は翌月の分を先払いする方法で支給されます。

その為、月の途中で世帯員が減少した場合や、月の途中から入院した場合等、福祉事務所が支給する生活保護費が本来の支給額より多くなる場合があります。

又、福祉事務所のミスで生活保護費が過大に支給される場合もあります。

こうした場合、生活保護の受給者には何の落ち度も無い場合であっても、多くもらった部分を必ず返還しなければならないのでしょうか。

生活保護の実施要領には、「法第80条を適用すべき場合及び(7)のエによるべき場合を除き、当該事由に基づき扶助費支給額の変更決定を行なえば生ずることとなる返納額(確認月からその前々月までの分に限る。)を、次回支給月以後の収入充当額として計上して差し支えないこと。」と書かれています。つまりその分を生活保護費から差し引いてもいいと言うことです。

しかしこれは、最低生活費以下での生活を受給者に強いるものであって、全く酷すぎる仕打ちです。

生活保護法第80条は、「保護の実施機関は、保護の変更、廃止又は停止に伴い、前渡した保護金品の全部又は一部を返還させるべき場合において、これを消費し、又は喪失した被保護者に、やむを得ない事由があると認めるときは、これを返還させないことができる。」と規定しています。

又、この場合の返還命令は、生活保護法63条の「費用返還義務」ではなく、「民法第703条に示されたところによる」とされています。(問答集 問13-2)

民法第703条(不当利得の返還義務)には、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と規定されていますが、判例では、「債務者が無資力になった場合、利得者に重大な過失がない限り、返還義務は軽減されると解されている」とされています。(大判昭和7年10月26日民集11巻1920ページ)

実際に、群馬県知事に対して出された審査請求に対して、審査会は「処分庁は、・・・実施要領が求めている、最低限度の生活を維持するために必要な需要を基とした費用を、実地につき調査し、正確に行った結果である旨の処分庁の主張はない。したがって、本件変更処分は、処分の前提となる調査を欠いている点について違法であり、取り消されるべきである。」と結論付けています。

(「平成30年度答申第3号」https://www.pref.gunma.jp/07/a35g_00019.html

要するに、保護費を削減することによって最低限度の生活ができるかどうかの考慮もなしに削減したことは違法」としているのです。

こうした事例も参考に、法80条の規定を適用して返還を免除させることが必要です。

生活保護を受けていても転居はできますか?

居住移転の自由は全ての国民に認められている権利であり、生活保護を受けていてもどこに転居しても本来自由です。

しかしながら、生活保護の場合は住宅扶助の限度額が定められているので、住宅扶助の限度額内の住居に移転することが必要です。

又、福祉事務所から転居に際して敷金等が支給される場合は限られており、それ以外の場合は自分で負担する以外ありません。

決められている「転居に際し、敷金等を必要とする場合」とは、 次のいずれかに該当する場合です。

1. 入院患者が実施機関の指導に基づいて退院するに際し帰住する住居がない場合

2. 実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する場合

3. 土地収用法、都市計画法等の定めるところにより立退きを強制され、転居を必要とする場合

4. 退職等により社宅等から転居する場合

5. 法令又は管理者の指示により社会福祉施設等から退所するに際し帰住する住居がない場合(当該 退所が施設入所の目的を達したことによる場合に限る。)

6. 宿所提供施設、無料低額宿泊所(社会福祉法第 2条第3項第8号に規定する無料低額宿泊事業を行う施設をいう。以下同じ。)等を一時的な起居 の場として利用している場合であって、居宅生活 ができると認められる場合

7. 現在の居住地が就労の場所から遠距離にあり、通勤が著しく困難であって、当該就労の場所の附 近に転居することが、世帯の収入の増加、当該就 労者の健康の維持等世帯の自立助長に特に効果的 に役立つと認められる場合

8. 火災等の災害により現住居が消滅し、又は居住 にたえない状態になったと認められる場合

9. 老朽又は破損により居住にたえない状態になっ たと認められる場合

10. 居住する住居が著しく狭隘又は劣悪であって、明らかに居住にたえないと認められる場合

11. 病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる 場合又は高齢者若しくは身体障害者がいる場合で あって設備構造が居住に適さないと認められる場合

12. 住宅が確保できないため、親戚、知人宅等に一 時的に寄宿していた者が転居する場合

13. 家主が相当の理由をもって立退きを要求し、又 は借家契約の更新の拒絶若しくは解約の申入れを 行ったことにより、やむを得ず転居する場合

14. 離婚(事実婚の解消を含む。)により新たに住 居を必要とする場合

15. 高齢者、身体障害者等が扶養義務者の日常的介 護を受けるため、扶養義務者の住居の近隣に転居する場合または、双方が被保護者であって、扶養義務者 が日常的介護のために高齢者、身体障害者等の住 居の近隣に転居する場合

16. 被保護者の状態等を考慮の上、適切な法定施設 (グループホームや有料老人ホーム等、社会福祉各法に規定されている施設及びサービス付き高齢者向け住宅をいう。)に入居する場合であって、やむを得ない場合

17. 犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保 を図るために新たに借家等に転居する必要がある場合

生活保護を受けていますが、相続放棄はできますか?

できます。

民法第915条は「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と定めていますが、相続を承認するか放棄するかは相続人の意思に委ねられるべきことであり、他人の意思の介入は許されないと考えられているからです。

債務超過の状態にある相続人が、積極財産のほうが多い相続財産について相続放棄した場合でも債権者がこれを詐害行為として取り消すこともできないというのが多数説です。

同様に、仮に生活保護受給中の者が生活保護を打ち切られるのを阻む目的で相続放棄を行ったとしても、生活保護法第4条「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」の補足性の原則に反するものではありません。

相続放棄をした者はその相続に関してはじめから相続人でなかったものとみなされることから、生活保護法第61条の報告義務(被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。)もなく、第63条の返還義務が生じる余地もありません。

よってその理由如何に係わらず、保護受給中の者が相続を放棄することは自由であり、福祉事務所に事前に相談する義務も報告する義務もないのです。

ネット上では、相続放棄を業務とする多くの弁護士や司法書士が「先ずは福祉事務所に相談を」と言っているようですが、生活保護法と民法についての理解不足と言わざるを得ません。

親から遺産を相続すると保護費を返す必要があるのですか?

それは、生活保護法63条に書かれている「費用返還義務」のことです。

第六十三条  被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

例えば、生活保護受給中に親が死亡して預貯金が500万円残り、それを兄弟2人で相続した場合、親の死亡した時点以降は250万円の資産があることになり、それ以降に支給された保護費について、250万円を限度として返還義務が生じるというのです。

しかも医療扶助の場合は金額がものすごく大きくなります。なぜなら、生活保護を受けると国民健康保険から抜けるので、医療扶助の負担は医療費の10割となり、返還する医療扶助の金額が多額になってしまうのです。これは酷なやり方ですが、現在厚生労働省は「医療扶助は全額返還」の方針をとっています。

返還を逃れる為に、「相続放棄」の手段を使うことは、保護の補足性の原則から逸脱するので難しいでしょう。

しかし、遺産分割の方法まで福祉事務所が関与することはできません。

例えば、収入と認定される現金は兄が相続し、直ぐには売却し現金化することも、他人に貸して収益を得ることもできない田畑等の不動産は、保護受給中の弟が相続することをすれば、直ぐに返還義務が生じることはありません。

また、受けた保護金品の全額を返還する必要のないことは、厚生労働省自身が言っていることです。『実施要領』では、「保護金品の全額を返還額とすることが当該世帯の自立を著しく阻害すると認められるような場合については、次の範囲内においてそれぞれの額を本来の要返還額から控除して返還額を決定する取扱として差し支えない」(「生活保護手帳別冊問答集2015年版」406㌻)と書かれています。

娘がもうすぐ結婚しますが、世帯は同じになるのですか?

生活保護は「世帯単位の原則」があり、「保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。」ことになっています。(生活保護法第十条)

同一世帯とは、「同一の住居に居住し、生計を一にしている」ことを言います。

しかし、「世帯単位の原則」の原則の例外として、「結婚、転居等のため1年以内において自立し同一世帯に属さないようになると認められるとき」は、その者を世帯分離し、その者以外で生活保護を受けることが可能です。(『生活保護手帳2015年度版』195㌻)

娘さんが、近々結婚して転居する場合は、このケースに当てはまりますので、娘さんを「別世帯」として、娘さん以外の家族で生活保護の要否や保護費の金額が決められることになります。

高校生のアルバイト代も生活保護費から引かれるのですか?

そんなことはありません。

厚生労働省の「次官通知第8-3」には、「高等等学校等で就学しながら保護を受けることができるものとされた者の収入のうち、次に掲げるもの」は「収入に認定しない」つまり、保護費から差し引かれることはないことになっています。

(ア)高等学校等就学費の支給対象とならない経費及び高等学校等就学費の基準額で賄いきれない経費であって、その者の就学のために必要な最小限度の額。

(イ)当該被保護者の就労や早期の保護脱却に資する経費に充てられることを保護の実施機関が認めた場合において、これに要する必要最小限度の額。

具体的には、私立高校における授業料の不足分、修学旅行費、クラブ活動費にあてられる費用については、認められているのです。

学資保険が入ると、保護は受けられなくなるのですか?

学資保険については、生命保険とは違って、解約返戻金(へんれいきん)の額が50万円以下なら解約は求められませんが、50万円を超えると、「解約した上で、解約返戻金を最低生活の維持に活用するよう指導すること。」(『生活保護手帳別冊問答集2015年度版』133㌻)という取り扱いになっています。

また、別世帯の祖父母等が契約している学資保険については、当該世帯の資産とは違うので、解約の必要はありません。

また、現時点では満期の時期が18歳を超える学資保険については、金額にかかわらず保有が認められていません。

生活保護でも針灸治療を受けることができますか?

早期に社会復帰できるように、医療扶助というかたちで鍼灸治療が受けられます。

受給するには、ケースワーカーに、「鍼灸治療を受けたい」ことを伝え、「生活保護による施術費給付承認書」が交付されると、医療扶助による鍼灸治療を受けることができます。

保護費を盗まれたときはもう一度支給されるのですか?

支給される場合があります。

局長通知第10?4「扶助費の再支給」「・・・前渡された保護金品又は収入として認定された金品を失った場合で、次のいずれかに該当するときは,失った日以後の当該月の 日数に応じて算定された額の範囲内において、その世帯に必要な額を特別基準の設定があったものとして認定できるものであること。 (1)災害のために前渡保護金品等を流失し,又は紛失した場合(2)盗難、強奪その他不可抗力により前渡保護金品等を失った場合」ということなのです。

親戚から大学入学金を借りると収入になるのですか?

保護を受けている間に借金をすると、その額は「収入」として認定され、保護費から差し引かれる扱いになっています。

ただし、事業の開始資金や、技能習得のための資金、就学資金、医療費又は介護費用、結婚資金、国や自治体の貸付金で一定のものはその例外として、「収入」とは扱わないことになっています。(局長通知 第8)

いままで、「収入」とは扱わないことになっている「就学資金」の中には、大学の入学金は入っていませんでした。だから、親戚からお金を借りて大学の入学金を支払うと、「収入」とみなされ、保護が廃止される可能性があったのです。 

今回厚生労働省社会・援護局長通知によって、平成28年7月1日から、大学等入学料、自動車運転免許取得費、就労・就学に伴う転居費用が「収入」とは扱わないことになりました。

これは自立助長という生活保護の目的にそった改正です。

保護機関の「事前の承認があること」が条件となっているので、福祉事務所がこの通達の趣旨に沿った扱いを行うように監視していく必要があります。

保護費をやり繰りして貯金しても大丈夫ですか?

最近、生活保護を受けている方から、「保護費を節約して貯金をしたら、保護を打ち切られた」とか、「子どもの学費の足しにしようと貯金したら、保護費をカットされた」等という相談が相次いでいます。

これは、明らかな法律違反、厚生労働省の「通達」違反です。

厚生労働省発行の「平成29年度生活保護実施要領等」の22㌻「問(第3の18)生活保護の受給中、既に支給された保護費のやり繰りによって生じた預貯金等がある場合はどのように取り扱ったらよいか。」では、「当該預貯金等が既に支給された保護費のやり繰りによって生じたものと判断されるときは、当該預貯金等の使用目的を聴取し、その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合については、活用すべき資産には当たらないものとして、保有を容認して差しつかえない。」と、ハッキリ書かれています。つまり貯金は認められているのです。

また、「問(第3の18-2) 高等学校等に就学中の者がいる被保護世帯において、当該者が高等学校等卒業後、専修学校、各種学校又は大学に就学するために必要な 経費に充てるため、保護費のやり繰りにより預貯金等をすることは認められるか。」では

1 具体的な就労自立に関する本人の希望や意思が明らかであり、また、生活態度等から卒業時の資格取得が見込めるなど特に自立助長に効果 的であると認められること。

2 就労に資する資格を取得することが可能な専修学校、各種学校又は大学に就学すること。

3 当該預貯金等の使用目的が、高等学校等卒業後、専修学校、各種学校又は大学に就学するために必要な経費(事前に必要な入学料等に限る。) に充てるものであること。

4 やり繰りで生じる預貯金等で対応する経費の内容や金額が、具体的かつ明確になっているものであって、原則として、やり繰りを行う前に 保護の実施機関の承認を得ていること。

「以上の4つのいずれにも該当する場合、保護 費のやり繰りによって生じた預貯金等は、その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められるものとして、保有を容認して差しつかえない。」と書かれています。

つまり、「子どもの学費の足しにしようと貯金したら、保護費をカットされた」というのは、この通達にも反している不当な処分なのです。

こうした場合、是非岡行政書士事務所にご相談下さい。

入院している間も家賃(住宅扶助)は貰えるのですか?

もらえます。

厚生労働省は『実施要領』の中で「入院入所後6か月間を限度として、当該住宅費
を認定して差し支えないこと。」「6か月を超えて入院入所することが明らかとなった場合であっても、その時から3か月以内に確実に退院退所できる見込みがあると認められる場合には、更に3か月を限度として引き続き当該住宅費を認定して差し支えないこと。」としているので、最長9ヶ月までは入院中でも住宅扶助は支給され、家を出て行く必要はありません。

又、その後3ヶ月間は、家財を別のところに保管してもらう必要がある場合には、家財保管料として月額14,000円が支給されます。

尚、長期に入院して家賃も出ないようになり、一度家を退去した場合は、退院後に新たな住居を確保する必要があります。
その場合は、敷金等として、権利金、礼金、不動 産手数料、火災保険料、保証料が支給されることになっています。