憲法は25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定され、これを具体化したのが生活保護法だ。

 最近よく問題となるのが「車の所有」だ。

 少子高齢化で公共交通機関がどんどん衰退し、買い物、通院など最低限度の生活の維持に必要不可欠なものになっている。

 しかし国(厚生労働省)は一部の例外を除いて車の所有を頑なに拒んでいる。

 2023年の「実施要領」では「自動車による以外に通勤する方法が全くないか、 又は通勤することがきわめて困難」な場合、「障害(児)者が通院等のために自動車を必要とする場合」に限定され、業務用の車保有は認められているが他目的での使用は禁じている。

 『朝日』(2024年12月26日付)によると厚労省は、障害がある受給者や公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む受給者が、通院や通勤に使う場合以外でも常生活に不可欠な買い物などでの利用も認められる通達を出したとのことだ。

 通達自体をまだ確認していないが、これが事実なら一定の前進だと思う。

 しかしこれは車の保有が認められた受給者の車を使う範囲が広がったというだけで、そもそも車の保有を認める範囲を広げないと根本的な問題にならないし、昨今のガソリン代高騰を考えれば、認められた車での移動にかかる費用に対して「移送扶助」等の範囲を広げる等の対応を考えないと受給者の生活を一層圧迫することになる。

 健康で文化的な最低限度の生活に必要な物品は時代とともに変わるが、生活保護行政はこれに追いついていない。

 最たるものは「スマホ」「携帯電話」だ。

 仕事を探し自立するにはこの所有は不可欠だ。いまだに福祉事務所はハローワークに通う回数を就労意欲のバロメーターにして週何回通ったかを報告させているが時代錯誤も甚だしい。

 いまどき仕事を見つけるのに主な手段はスマホだ。

 しかし、生活保護受給者の多くは過去に滞納の「実績」があり大手キャリアとは契約できない。よって「ブラック」でも大丈夫な業者と契約しているが数倍の費用がかかる。

 行政が法人契約をしてそれを原価で貸し出せば、それだけで月5千円程度の節約になる。部屋のWi-Fiもスマホ利用には不可欠だがその設置費も一時扶助の範囲に含めるべきだ。